つらつらら

推しのこととか 読書の感想とか いろいろ

📚落合恵子/わたしたち

久しぶりの感想綴り。

最後にアップしたのが今年2月ということで、8か月も放置していたわけですが、その間、感想を書けなかったというだけで読書は普通にしていました。でも、読み終えて興奮冷めやらぬまま感想を書くぞ!と意気込むものの、途中で断念してしまうことが多く、私は感想書くの向いてないな…と思って放置していました。

多分、なんか小綺麗にまとめようとしてダメになっている気がするので、誰が見るでもないこのブログ、変に上手くまとめようとか思わずに、まずは書き殴ってみようと思います。よく聞くのが、絵を描く時に完璧に描けないからと途中で投げ出すよりも、完璧ではなくても1枚を描き切るほうがずっといい、というようなやつ。文章においてもそうだと思う(というか何においてもそうだと思う)ので、今回はばーっと感想書いてみます。

※セリフなど少しネタバレを含んでいますので、未読の方は回れ右をお願いします。

本書はだいぶ前に本屋さんで見かけて気になっていたものの、その時は他の本を購入してしまったので手に取ることなく、最近になって、そういえば…と思い出した本でした。

女の友情を描いた物語。
読み終わった後に、前もこういう作品を読んだような気がするなと思ったんですが、柚木麻子さんの「あまからカルテット」でした。
あまからカルテットよりも、もっと長い年月を過ごした女友達の繋がりを描いた作品でしたが、4人組という共通点もあり、あまからカルテットのメンバーもきっと長い年月をかけてこの本のような友情を築いていくんじゃないかなと、ちょっと脱線したことを思うなどしました。

 

4人の女性たちは、それぞれの悩みや苦しさを抱えているけれど、それをお互いが理解していて支え合っているのがよかったです。でも、変にベタベタした仲の良さではなく、付かず離れずのバランスがちょうどいいというか、いつ何時も一緒にいるとか、毎日連絡を取り合っているとか、そういう物理的な近さは無いんだけれど、お互いのピンチには駆け付けられる、傍にいてあげられる繋がりの強さがあって、こんな風に付き合いを続けていける友がいるなら、友人の数なんて関係ないんだよなと思いました(これは私が友人が少ないので余計にそう感じました)。

 

美由紀がシェルターを訪ねた時、シェルター先の女の子に「ギルティ(有罪)」と言われてしまいます。美由紀はその言葉を「あたしは自分の人生を大事にしていない。そういう意味でも、ギルティだと指摘されたような気がしたの」と捉えているんだけれど、その捉え方が私は結構好きで、自分の人生を大事にすることこそ、自分勝手でギルティなんて言われそうなこの世の中(しかも彼女が生きていた当時は今よりもっと古い考えが浸透していた時代)で、「自分の人生を大事にしていないことがギルティ」と語れることはとても大事なことだよなと強く思いました。

そうして美由紀が「だってあたしの人生の主(あるじ)はあたしなんだから。誰もあたしに命令することはできない。(中略)あたしこそ、あたしの人生の主なのよ!」と気づくところは、彼女のこれまでの生い立ちを思うと、やっとここに気づけてよかったと思ったし、この劇的なセリフ回しが変に感じないのも、彼女だからこそだよなと思いました。

ほかに、容子が言った「人は誰でも、自分で自分になっていくのだと思う。それを、誰かのせいになんてできない。でもね、自分の望む自分になろうとしながら、なれないで藻掻いている子だっている。ちょっとした、ほんとにちょっとしたきっかけさえあればなれるのに。努力でもない、運でもない、ちょっとしたきっかけ……」というセリフも好きでした。努力さえできれば、でもなく、運が味方すれば、でもなく、ちょっとしたきっかけ、という言葉が良かったです。

そしてそれに対して佐智子が返した「誰かがちょっと背中を押してくれたら、ほんの少し水やりをしてくれたら……。長い間、心の奥で眠らせてきた種が目覚め、目を出して、双葉を開くのよ。わたしの中のちっぽけな種子、ずっと眠り続けていた種子に水やりをしてくれたのが……、そう、あなたたち。そして、美智子先生」というセリフ。友の存在が佐智子にとってどれほどに大きなものだったのか、それがすごくよく表れている言葉でとても好きです。そして美智子先生という存在も、佐智子だけではなく彼女たちに大きな影響を与えていることがここでも読み取れて好きでした。


余談ですが、きっかけといえば、乃木坂46の「きっかけ」という曲にこんな歌詞があります。「決心のきっかけは理屈では無くて いつだってこの胸の衝動から始まる」。容子の言うきっかけは、外的要因のことを指していたのかなと思いますが、この歌詞のように自分の中に芽生えた何か、湧き上がってくる何か、も大きなきっかけになるよなとふと思いました。私、乃木坂はあまり詳しくないんですが、この歌詞はとっても好きです。

 

話は戻って、この物語の主人公である4人の女の子(女性)たちのほかに出てくる、彼女たちに色々と影響を与えた人物・鈴木美智子先生。彼女たちが通う学校の校長先生だった人。美智子先生が定期的に開く講話で語る内容が良くて、こういう機会が私も学生の頃にあったら良かったのになぁと思いました(でもそれは大人になった今だから思えるだけで、学生の頃に聴いていたらつまらないとしか思わなかったかもしれません)。

美智子先生の話で好きだったのは「それがなんであれ、あなたがそれを不可能だと決めたとき、あなたの内側から不可能は生まれるのです。しかし、あなたにとって最も大事なことは、何になるかではなく、どう生きるかであり、よりあなた自身になっていくことです。なぜならば、あなたがあなたであること以上に、プレシャスなことはありません」というセリフ。
あなたがあなたであること以上に、プレシャスなことはない。そのまっすぐな表現が素敵だなと思いました。

それから他の場面で話していた「ようございますか、あなたがた若き女性たちよ。ひとつのこころみに失敗したからといって、それは単にひとつの失敗でしかありません」も好きなセリフの一つです。

あと、これまた美智子先生の講話になりますが「おしゃれは自己表現のひとつ、自分が気持ちよく過ごすために、自分であることを自分で愛するためにおしゃれをする、どの色とどの色を組み合わせるか、それはチョイス、選択の問題、そしてチョイスこそ人生の基本」(概要)という話を読みながら、私たちは普段の何気ないことから、いろんなことを選択して自分を表現しているんだよなということをあらためて実感しました。日頃の洋服選びも、馬鹿にしちゃいけませんね。

 

美由紀、晶子、容子、佐智子。4人がそれぞれに、その時々に悩みや生きづらさを抱える中で、頼れるパートナーがいる子も、そうではない子も、なにかピンチの時にふと頭に思い浮かぶのは、顔を見たくなるのは、声を聴きたくなるのは、やはりこの4人だった、という関係性はとても素敵でした。


13歳という若さで始まったこの関係が、歳を重ねて、70代になるまで細く長く、だけど途切れることなく続いているって素敵ですよね。

わたしたちは、いまもまだ「わたしたち」だった。


いつも一緒にいたり、常に会って近況を報告しあったりしているわけではないのに、大事な局面にはいつも友が居てくれた。そういう友に出会えたことが、彼女たちの大変な人生の中での救いだったのだろうなと思います。

 

書きなぐったのでまとまりもないし、登場人物全員に触れる気力が無かったので一部の人のことしか語れていませんが、読んで良かったなと思う作品でした。