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📚南綾子/死にたいって誰かに話したかった

読書感想をブログに書く習慣をつけてみようと、少し頑張って書いてみます。
余談ですが、ブログの表示がスマホとPCでは違ったり、カテゴリ表示が上手く出来なかったりするので、じわじわと体裁を整えていきたい所存…

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Twitterのタイムラインで本作のことを見かけて、あらすじとタイトルに魅かれるものがあり気になっていたんですが、寺地はるなさんもTwitterでこちらの作品を絶賛されていたので、余計に気になり購入。
死にたいって誰かに話したかった。
おお…と衝撃を感じる言葉だけど、一度はこんな気持ちになったことって実は多くの方があるのではと思う。私はそうなので。ふとした時に、死を意識する。それはゆくゆくやってくる死ではなく、もし今死ねたらどうだろうかとか、死にたいとふいに思ってしまうこととか、そういうときに意識する死。常に死にたいとは思ってはいないし、何かにとても追い詰められているわけではないけど、ふとした時に、息をするように頭のなかに浮かぶ死。
世の中、死にたいという感情を持ったことが無いという人もいると聞くので、私はそれが信じられないのですが、この本はわざわざタイトルにこう書かれているので、私みたいな人に向けられた本なのではなかろうかと、そんな風に受け取って手に取ってみました。


南綾子さんは初めて読む作家さんだったんですが、女による女のためのR-18文学賞出身の方ということで、これは期待大…!となりました。
そうそう、町田そのこさんもこの賞出身だったことを今回調べていて知りました。「カメルーンの青い魚」が収録されている「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」を以前読んでいるのに、ここで初めて知るという…。

本作は、ざっくりまとめると、何かしらの生きづらさを抱えた人たちが、ぽつりぽつりと話していく中で、お互いの生きづらさを理解しながら、自分とも向き合っていく過程が描かれている作品です。

主人公の奈月は、あたたかい家庭が欲しいと思いながらも恋人も友人も出来ず、職場では空回りしている。自分の生きづらさを誰かに理解してほしくてたまらなくなり、そこで自ら「生きづらさを克服しようの会」というものを立ち上げ、自身の抱える生きづらさを共有できる場を設けようと試みる。
そこに集まった一人の青年・雄太、元医者・薫、薫の妻の友人・茜。奈月が抱える生きづらさと、3人それぞれが抱える生きづらさと、立場が違うことで様々な角度から見えてくる「生きづらさ」にいついて考えさせられる作品でした。

奈月や雄太の生きづらさは、割とテンプレと言うか、分かりやすい「生きづらい」の姿だと思った。なので読んでいて、そりゃ生きづらいだろうな…という気持ちになって、どちらかというと二人には共感したし、なんなら自分と重ねてしまうところもあって、読みながらじわっと泣きそうになる部分もあった。

薫さんと茜さんは、私からするとその立場であっても生きづらいと感じるのか、という感じだった。前の2人のように分かる分かると共感する部分はどちらかというと少なくて、ただ、世間的に見て幸せのテンプレートと言ってもいいような生活をしている人たちでも、実際のところは幸せかどうか分からないのだな、ということを実感した。
茜さんはとくに、一番闇が深いと思った。本人もずっと蓋をして苦しかっただろうなと思う。その苦しさを自覚したときに、生きづら会(生きづらさを克服しようの会の略)のみんながそばにいてよかったと思う。励ましなんか無くても、ただ黙って傍にいてくれる人が居て良かった。

みんな不器用で、それでもその不器用さとなんとか向き合いたくて、克服したくて、逃れたくて、必死なんだということが分かる物語でした。分かりやすいハッピーエンドでは無かったけど、みんながそれぞれの形で前を向いている姿に励まされもしました。

色々と印象に残ったセリフや文章はあったし、付箋も貼ってるんですが、ここでまとめる気力がないので2点ほど選びます。
1点目は、他人と気持ちを分かち合うには、その前に自分自身と向き合わないといけない、ということ。深い。
そして薫さんの言った「結局、生きづらさなんてそう簡単に克服できないよな」。この言葉が、失望ではなく、安堵に感じた。すぐには救われない言葉だけど、それでこそ人生だと思える言葉。


そして、南さんの書く文章の中で、例えが面白いなと思うものがいくつかありました。例えば、薫さんが砂浜に足を取られて転んでいるシーンでの「砂にまみれて特大わらび餅みたいになっている薫」とか、同じく薫さんが父親の悪夢をいくつか見てしまうんだけど、その一つが「ひまわり畑で娘たちと遊んでいたら、突然すべてのひまわりの花が父の顔面に入れ替わってしまう夢」とか、「空は熱帯魚の模様のような夕焼け」とか。
少しダークな気持ちになる中で、くすっと笑えたり、そりゃ怖いわとツッコんだりすることで気持ちがほぐれたし、熱帯魚の模様のような、という表現はあ~なんか分かるわぁとなるのに、ふいに思いつかない表現ですごいなと思ったし、所々に南さんの文章の個性を感じて楽しかったです。

ブログに書くのはやはり向いていないようなので、雑多なまとめ方になりましたが、南綾子さんの作品はまた読んでみたいと思いました。婚活の話題とか、個人的にプライベートも気になる方だったので、また色々検索してみます。

付箋貼ったところはたくさん読み返そう。そして私もまた、前に進みたい。